これをお読みいただいているみなさんは、「がん薬物療法専門医」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか? 抗がん剤治療の専門医のことです。2005年より日本臨床腫瘍学会が専門医認定試験を開始しました。2011年4月現在、日本で586人のがん薬物療法専門医がいます。
これまで日本では、抗がん剤治療の専門医はとても少なく、専門医の育成が必要だと指摘され続けていました。このような状況の中、国はがん対策の一環として、がん薬物療法専門医を養成する政策を掲げ、5年前から「がんプロフェッショナル養成プラン」として推進してきました。このたび私は、このプランにのっとり、がん薬物療法専門医の資格を取得することができました。
これからしばらく、この専門医の取得をめざしたきっかけやその折々の考え、苦労話や今後の希望などについて少しずつ綴っていきたいと思います。
抗がん剤治療については、今までも、そして現在でも各科の医師が担当して行っています。例えば胃がんや大腸がんは消化器外科や消化器内科の医師が、子宮がんや卵巣がんは婦人科の医師が、それぞれ抗がん剤治療を行っています。その努力と成果には目を見張るものがあります。
一方で、欧米では抗がん剤治療を行う部門は独立していることが多く、専門医の数も日本とは桁違いに多いのが現状です。日本もこのような充実した治療の体制を整えるべきだとの意見が強く、がん薬物療法専門医の育成が始まったわけです。
がん薬物療法専門医には何が求められるのでしょうか? それぞれの専門の科の医師とどう違うのでしょうか?
次回はこんなお話から続けていきます。
2011年7月16日 奥出雲病院 外科 鈴木賢二