何と前回更新してから6ヶ月が経ってしまいました。秋から冬にかけては何かと忙しく(これは言い訳です。本当は文章を少し書くくらいの時間がないはずがなく、時間を生む努力を怠っていたということです)、再び専門医の取得までの思いを綴ってゆきたいと思います。
「腫瘍学」。なんと大それた響きでしょう。この学問は、いかに腫瘍が発生・増殖し、それを制御するためにはどんなことが有効なのかを研究する分野です。前回、腫瘍学の勉強を一から始めたことや学生時代にはこのような分野の教育はなかったことをお話ししました。そういうわけで腫瘍学の勉強はとても困難でした。初めて知る概念、初めて目にする用語、初めて見る治療成果。これらに戸惑いながら、多くの時間をかけ、苦しみながら勉強を続け、一方では新しい知識を身につけてゆくことは楽しくもありました。もちろん知識に果てはなく、私はまだその端緒を垣間見たに過ぎませんが、なんとか一通りの知識を得ることができました。
次いで取りかかったのが、大学病院で経験した症例の病歴要約を書くという作業です。これは自分の専門領域(医、大腸、肝胆膵などの消化器)だけでなく、血液腫瘍や肺がんなども含めて30例の患者さんの病歴、治療の経過、考察を提出するもので、一例ずつの記載も大変な上、合計30例ともなると膨大な量になります。これを現在の標準治療(科学的根拠のある最も患者さんに勧めるべき治療)が定まる根拠となったデータを示した論文を引用しながら記載し、考察を進めるのはとても困難な作業で、精神的にも時間的にも消耗しました。
これらと平行して、11月に行われる筆記試験の勉強も始めました。腫瘍学を勉強する上で得た知識を振り返り基礎的な知識の確認を行う一方、がんの化学療法全般(消化器がんはもちろん、呼吸器、造血器、婦人科、泌尿器科、皮膚科など全ての悪性腫瘍)の標準治療の内容、副作用のコントロールなどを再度見直し、試験に備えました。
次回は、いよいよ試験当日についてお話しいたします。
こんなことをお話しすると、勉強ばかりしているようですが実はその反対です。もともとテニスが好きで県内の大会にはいろいろ参加していますが、去年は何の拍子か隠岐の島ウルトラマラソン50kmの部に参加しました。50kmと言う距離を走りきることはかなり非日常的な体験です。人生観が変わったような、景色の色合いが変化したような、そんな経験でした。再びそんな体験をしたいと思い、今年はなんと100kmの部にエントリーしてしまいました。我ながら無謀と思いますが、決めたからには準備を積んで参加し、今度はどんな世界が待っているのかとても楽しみでもあります。完全にMなのかもしれません。
2013年1月22日 奥出雲病院 外科 鈴木賢二