平野部から遅れること1週間、ここ奥出雲町は桜が満開です。ほんの2週間前には雪が降ったのに、冬から一気に初夏の陽気になっています。今年はソメイヨシノと山桜が同時に咲いている光景も、また梅と桜が隣り合って咲いている場所もあり、いろいろと目を楽しませてくれます。

さて、2008年1月、がん薬物療法専門医になることを決意した私は、必要な研修を受けるために島根大学大学院のホームページから情報を得て、大学院学務課というところに電話を入れることにしました。専門医になるためには、認定研修施設(島根大学病院は、認定研修施設です)で2年間の研修を受ける必要があり、大学院にはいるとこの研修コースに参加することができると書いてあったからです。がんプロフェッショナル養成プラン、腫瘍専門医育成インテンシブコースという名前でした。

ある日、意を決して大学院学務課に電話をしました。「奥出雲病院の外科の鈴木と申します。大学院の腫瘍専門医育成インテンシブコースに入りたいのですが。。。。」と、担当の方におそるおそる聞いてみると意外な返答が。「本当に来ていただけるんですか?」とおっしゃる。おや、と思いながらもそのほか受講にはどうすればいいか、試験などがあるのか、カリキュラムがどうなっているかなどを尋ねてみても今ひとつはっきりしない。もっと言えば、しどろもどろ。その時は、なぜそうなのかはわからないまま、また後日連絡をとり合うことにして電話を切りました。

後になってわかったことですが、このコースができて間もないためにまだ具体的な内容が全く決まっていなかった上に、大学院の事務担当の方ははたして受講者があるかどうか不安でもあったような、そんな状態だったようです。そこへ私が電話をしたものだから慌ててそんな応対になった、それが事実のようでした。

そこからは手探りで手続きを進めてゆきました。まず、院長にがん薬物療法専門医資格をとりたいこと、そのためには大学で研修が必要であることをお話しし、最大限協力するとのお言葉をいただきました。また研修内容については、大学の指導教官であるI教授と数度にわたり面談し、具体的なカリキュラムをつめてゆきました。

最大の問題は、研修に行っている間の奥出雲病院の診療でした。ここにもいくつかの乗り越えなければならない壁がありました。週2回の外来診療をどうするか。外科の手術をどうするか。入院患者さんをどうするか。当直をどうこなすか。婦人科や整形外科の手術の支援(麻酔や手術助手など)をどうするか。

結果的には、奥出雲病院のスタッフのみなさんにも全面的に協力をしてもらい、また島根大学消化器外科の医局にも支援をいただき乗り越えることができました。外来診療は大学医局から週2回医師を派遣していただく。手術は週一日として外科も、外科以外の手術もその日にかためて行う。入院患者さんは当時卒後3年目のY先生に任せ、何かあったときには連絡をとりあってゆく。週1回の奥出雲病院での手術の時に当直をいれてもらう。こんな体制が出来上がりました。特に多くの看護師さんに「留守はなんとか守るのでがんばってきてください」と言ってもらい、本当にうれしく思いました。またY先生もキモの冷える思いをさせてしまって申し訳なかったと思っています。

4月にはいり、テニスのシーズンの幕開けで、大会もはじまりました。緊張したり疲れたりうれしかったり悔しかったりする、試合でしか味わうことのできない体験ができるのも代え難い体験です。隠岐の島ウルトラマラソンに向け、少しずつ長距離走のトレーニングも続けています。最近いいランニングコースを発見しました。尾原ダムというダムが最近完成したのをご存知でしょうか。その周囲のダム道路は車も少なく、道も良く眺めもすばらしく、心癒されながら走っています。   

2012年4月16日 奥出雲病院 外科 鈴木賢二